第12章 Fate/Zero...? 大切だからこそ
幼馴染みで、ずっと一緒だったからこそ、知っている。“シロウ”は、両親のことを、すごく大切にしていた。
誕生日や、結婚記念日には、いつも、どんなプレゼントを贈れば喜んでくれるだろうかと、私に相談しにきて、運動会では、いいところを見せるのだと、無邪気に笑って――そんな“シロウ”だったからこそ、これまでの平穏な生活が、続いてほしかったのに。なのに、
「私が、戻ってきたから、だから、こんなことになって――」
「■……」
「……全部、私のせいだ」
そう呻くようにこぼせば、シロウは私の背中に手を回した。力強い腕が、そっと、抱き返してくる。
「自分を責めるな――癪ではあるが、“あれ”と私は、ほぼ同じ存在だ。だからこそ、わかる。“あれ”は、君が自分を責めることを、望まない」
「――だけど、」
「会うのが怖いというのなら、会う必要もない。私としても、会いたくはないからな――だが、君は、約束しただろう? “オレ”たちと」
――必ず、戻ってくるよ。
それは、かつてあった未来で、私が命を落とす間際に、士郎に告げた言葉。再会を、約束した言葉。
そのことを示唆されて、私は一瞬、口を引き結んだ。でも、すぐに、それをほどく。
「……士郎を、迎えに行きたいの。シロウも、一緒に来てくれる?」
ふ、と。耳もとで、シロウの笑う気配がした。
「やれやれ、帰ってきたとたんに、これか……サーヴァント使いの荒いマスターだな」
「ごめん」
「いたしかたあるまいさ。君の呼び声に応じたのは、私自身の意思だからな」
いつものように皮肉を言いながら、シロウは私の腕を取って、体を離す。
そして、私たちは、まだ窓の外が暗い内に、士郎のいる養護施設へと向かった。