第12章 Fate/Zero...? 大切だからこそ
何度も、何度も、繰り返し夢にみる光景。父と、母と、息子――どこにでもある平凡な家庭の、平凡な日常風景。笑顔の絶えない、穏やかな、家族の時間。
私は、その夢をみられるのが、うれしかった。平穏な日常の中で、笑顔をみせる「彼」をみられることが、うれしくてたまらなかった。
――だのに、どうして、幸福な時間というものは、いとも容易く壊れてしまうのだろう。
「彼」の両親が、忌まわしい「過去の未来」を思い出したのは、ほんの、つい数日前。
何も知らなかった彼の両親は、その忌まわしい“記憶”に怯え、錯乱状態に陥ってしまった。二人は深山の病院へ運ばれるも、錯乱は治まらず、すでに“記憶”を返還されていた一人息子の「彼」は、養護施設へと預けられてしまった。
――それが、誰のせいなのかなんて、そんなことは考えるまでもない。
私は、「彼」に謝らなければいけない――なのに、足が震えて、部屋から出ることができない――
ロンドンに行っていたシロウが戻ってきたのは、あろうことか、そんなときのことだった。