第7章 Coffee Breakをしよう①
烏養さんが組んでくれたチーム戦は、俺たち町内会チームがフルセットで勝利した。そしてその翌日、寝不足のツケと練習の疲れが出たのか、情けないことに俺は風邪を引いて部活を休んだ。幸い土曜日だったから授業は休まずに済んだけど、次に部活に顔を出したら、大地だけじゃなく戻ったばかりの西谷にまでどやされそうだ。根性が足りない、とか言って。
目を覚ますと、枕元の時計は5時半を指している。それが夕方なのか早朝なのか一瞬分からず、カーテンを開けて確かめる。外は西に傾いた太陽が、空をオレンジに染め始めていた。山の上には、白く輝く三日月がぽっかりと浮かんでいる。どうやら朝起きて再びベッドに入ってから、今の今まで眠っていたらしい。
ゆっくり眠ったおかげで熱は下がったようだ。心なしか身体も軽い。
階下に降りて熱を測る。
36.8度。
母さんはまだ帰ってない。
そっか、今日は遅くなる日だっけ…。
俺はグラスに水を注ぎ、一気に飲み干した。汗をかいたせいか、喉がカラカラに乾いている。2、3杯目も飲みきってようやく落ち着いたところで、ドアのチャイムが鳴った。
「はい…」
ドアを開けると、そこにはなんとスーツ姿で両手にスーパーの袋をさげたみなみさんが立っていた。俺を見るなりぱっと笑顔になる。
「あ、孝支君…!」
「え、みなみさん…!?なんでウチに!?」
「風邪で休んだって澤村君から聞いたの。土曜はおばさん遅い日でしょう?食べるものないんじゃないかと思って…もしかして寝てた?」
「そ、そうだけど…」
ちょっと待ってくれ、こっちは今起きたところなんだ。おまけに寝ぐせはついてるし、顔だって洗ってないんだぞ。ヤバイ、せっかく下がった熱がまた上がりそうだ…。
頭を抱える俺を見て、みなみさんが心配そうな声を上げた。
「だ、大丈夫!?」
「あぁ、うん。ヘーキヘーキ…つーか、いいのかよ?一人の生徒にそこまで世話焼いてさ…」
「気にしない、気にしない!どうせご近所なんだし、お互いに昔からこうだもの」
「上がっても大丈夫?」と聞いてくるみなみさんを追い返すことなんかできず、俺は渋々(決して嬉しくなんかない、ホントに)招き入れた。
「わぁ、孝支君の家に来るなんて久しぶり!」
「だな、最後に来たのは5年くらい前だし」