第6章 エースの帰還
結局、旭は部活に来なかった。そしてまた、俺は性懲りもなく旭の目の前にいる。
「…なんだスガ、また来たのか?」
案の定、俺の顔を見た旭は、昨日と同様複雑な表情で苦笑した。
「だって、お前逃げるみたいに行っちゃっただろ?しつこいって思われるだろうけど、俺はお前の本音が聞きたくて来たんだ」
旭はまいったな、と言わんばかりに小さくため息をついた。
「本音って言われても、昨日言ったことが全部だよ。俺にはもうエースの資格がないって…。お前もアイツらも、なんで俺なんかにこだわんの?」
「アイツら?」
「ほら、昨日来た新しい1年。あの二人今日も来たんだ、昼休みにわざわざ」
「えっ、日向と影山のことか?」
「そうそう」
「…日向のヤツ、お前に憧れてるからな」
「俺に…?」
「あぁ、日向もエースになりたくてさ。でも見た通り、あいつの体格じゃパワーも身長も足りなくて…。だからじゃないか?」
「……だったら、なおのこと俺みたいなへなちょこ見たら失望させちまうだろ」
そう言って旭は目を伏せた。
違う、こんな言葉を聞きたいんじゃない。
これじゃ堂々巡りじゃないか。
俺が口をつぐんでいると、旭が何か思い出したように俺を見る。
「そーいや、音駒と練習試合やるんだってな」
「あれ、なんで知ってんの?日向と影山に聞いたとか?」
「あ、いや…その…」
一瞬、旭がうろたえた。
「昨日帰りにたまたま体育館のそばを通ったときに聞こえて…」
そう言って、旭は気まずそうに目を逸した。
バカ野郎。たまたま体育館のそばを通ることなんかないだろ。俺達が使ってるのは第二体育館だ。校舎から出て、わざわざ長い渡り廊下を渡らなければ辿り着けない。まっすぐ家に帰るだけなら、そんなルートは通らないはずだ。
俺は確信した。
旭は、まだバレーを嫌いになったわけじゃない。