第5章 練習試合と邂逅
「監督、お待たせしました!」
2セット目が終わった所で体育館の扉が開いた。男性教師に連れられて、みなみさんと、選手が一人やってくる。
日向に気付いたみなみさんが、にこにこと手を振った。日向も嬉しそうに声を上げて腕をブンブン振り返す。
「あっ、みなみ先生だ!みなみ先生ェー!」
その横で、影山が対照的に低く唸る。気付いた田中が影山に声をかけた。
「どーしたよ、影山」
「あの人、及川さんです…」
「オイカワさん…?」
「中学の先輩で、サーブとブロックはあの人見て覚えました。超攻撃的セッターで、実力もチームでトップクラスだと思います」
「なぬっ!?」
「…あと、性格が悪い…月島以上かも」
「それはヒドイな!」
「ちょっと…自分のこと差し置いて僕を引き合いに出さないでくれる…?」
不快感を顔全体に浮かべて、月島が横やりを入れた。
及川徹ーーー
そういえば、前回の大会で噂になっていた気がする。青城の2年にすごいセッターがいる、と。あの時は直接青城と対戦することがなかったし、まだ1年上がいたから、そこまで目立ってなかったと思うけど…。
その及川の姿を見て、青城の監督はホッと息をついた。
「及川、やっと来たか!足はどうだった!?」
「バッチリです!軽い捻挫でした!」
「全く…気を付けろよ。ん…そちらは?」
「烏野高校バレー部の副顧問をしています、野村です。遅くなって申し訳ありません」
「これはこれは…青城バレー部の入畑です、よろしくお願いします。今、ちょうど3セット目が始まるところですよ」
それを聞いた及川は、得点板を確認して目を細めた。口元にはうっすら笑みが浮かんでいる。
「…へぇ、ウチ相手に1セット獲ったんだ」
「おい、そこのクソ及川!帰ってきたならボサッとしてないでとっととアップしてこい!!」
「ヒドイ、岩ちゃんっ…!ケガ人なんだからもうちょっと優しく扱ってよね!」
「うるせーボケ及川!自業自得だろグズ川!!」
「岩泉の言うとおりだぞ及川。とにかく入念にアップして、終わり次第すぐ入れ」