第5章 練習試合と邂逅
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「田中さんっ、すみませんでしたっ!!」
「あーもー、だから、いいっつってんだろ?それよりお前は大丈夫なのかよ?」
ペコペコと何度も頭を下げて謝る日向に、田中は呆れ顔で答えた。さっき日向が汚したジャージを袋に放り込み、ギュッと口を結ぶ。
「は、はい、なんとか…。バスの中で少し休ませてもらったし、ちょっと落ち着きました…」
「おう!それなら俺のゲロジャージも浮かばれるだろ…!なははは…!」
「す、スミマセン…!」
「おい田中ぁ、お前よその学校来てまでゲロジャージとか言うなよ…恥ずかしいだろ…」
二人とも声がデカイせいか、下校する生徒がこちらを怪訝な顔で盗み見てから校門を出て行く。わいわいと騒ぐ二人に、チクリと縁下が釘を刺した。
通り過ぎる女子の制服を見て、俺はつぶやく。
「懐かしいなぁ…」
隣にいた大地が不思議そうな顔で俺を見る。
「懐かしい…?」
「あぁ…。野村先生が青城の出身なんだよ。あれと同じのを昔よく着てたなーって思い出しちゃってさ」
「ほぉー…」
「な、なんだよ、その顔…」
「…いや、別に」
その時、職員室に挨拶に行っていた武田先生が戻ってきた。
「お待たせーー!いやぁ、烏野高校よりも随分と立派な校舎ですねぇ…!」
そう言って、キョロキョロと辺りを見回す。校舎の造りやグラウンドの広さ、その他諸々の設備は、確かに烏野よりもずっと充実しているようだ。みなみさんもここに3年間通っていたんだ、なんて考えると、知らない学校でも親しみが湧いてくる。
武田先生は「よしッ!」と気合を入れた。
「そのまま第三体育館に向かうようにとのことです。早速行きましょう!」
「うしっ、じゃあ行くぞ、みんな!」
『オースッ!!』