第3章 3vs3
「お疲れ様、お邪魔します!」
入り口から知っている声が聞こえた。見ると、みなみさんがひょこり、と開いた扉から顔を出す。得点ボードの横で日向達の試合を見ていた俺が手を振ると、彼女もこちらに気付いて駆け寄ってきた。
「休みなのにわざわざ来てくれたんだ」
「うん、気になっちゃって」
照れくさそうに彼女は微笑み、得点ボードを確認する。
影山・日向 02
月島・山口 01
点差を見た彼女が、小さな歓声を上げた。
「わ、すごい!日向君達リードしてる」
「まだ始まったばっかだけどな。あと、向こうのコートにいるデカイ眼鏡のが月島。その隣が山口。あいつらも新しく入った一年なんだ」
俺は日向達の向かいのコートにいる二人を指差した。日向と影山事件の数日後、新たに入部届けを出しに来た新入生。
月島はでかくて頭がキレそうだけど、ひねくれたところが玉にキズ。一見マジメでおとなしそうな山口は、そんな月島にいつも付いて回っているコバンザメのようだった。なんだかんだで打ち解けた様子の二人は、高校で知り合ったというよりも、もともと友達なんだろう。そのせいか日向と影山よりもずっとチームプレイが成り立っているように見える。
その時、こちらに気付いた日向と田中が声を上げた。田中はいつの間にかTシャツを脱いで上半身裸になっている。
「あっ、みなみセンセイっ!!」
「おおっ、みなみちゃんっ!!」
嬉しそうに二人でこちらに駆けてきた。半裸状態の田中を見て、彼女は慌てて俺の後ろに回り込む。
「応援に来てくれたんスか…!?」
「あ、う、うん…!」
目のやり場に困っている彼女を見て、俺はすかさず田中の脇腹にチョップを食らわせた。「ぅぎゃっ!!」と変な声を出して横に飛び退く。
「田中ァ、いい加減その服を脱ぐクセ直せよ…スパイクが決まって嬉しいのは分かるけどさ…」
「す、スンマセン…」
「あと…」と俺は付け加えた。
「“みなみちゃん”じゃなくて“野村先生”な」
「そっ、それを言うなら日向だって…」
「は、はひっ!?」