• テキストサイズ

君への5センチメートル【ハイキュー!!】

第1章 はじまりは…


朝の光がカーテンを透けて部屋に射し込む。
今日は久々に朝練がない日で、いつもよりゆっくり寝ようと目覚ましをかけたのに、習慣とは恐ろしいものだ。

枕元の時計は午前5時50分。
アラームが鳴る時間まであと1時間以上もある。

俺は眠い目をこすりながら身体を起こし、大きなあくびとともにグッと伸びをした。

(せっかく朝練無い日なのに…なんか損した気分だな)

カーテンを開くと、外は気持ちの良い春の快晴だ。何となくこのまま二度寝するのはもったいない気がして、俺は部屋を出た。

家族はまだみんな寝ている。
静かに階段を降りて、適当に朝食をとり、早めに支度を済ませたところで母さんが起きてきた。

「あら孝支、おはよう。今日は朝練ない日じゃなかったの?」

「あぁ…うん。そうなんだけど目が覚めちゃってさ。早めに行って部室で時間でも潰そうかと思って」

「そうなの、新学期から大変ねぇ」

「昼は購買で買うから弁当はいーよ」

会話をしながら靴を履く。

「分かった。じゃあ、気を付けてね」

「ん、じゃあ行ってくる」

「そういえば今日からだったかしら、あの子が来るの…」

出かけ際に母さんが独り言をつぶやいたけど、長くなるのも面倒で、聞こえないふりをして俺は家を出た。

今日から新学期。

通学路の途中にある桜並木はまだ蕾のまま。あちこちから開花宣言が聞こえてくるけど、ここ宮城の桜が咲くのはもう少し先になりそうだ。
空気がひんやりして肌寒い。少し走れば温まるだろうかと、俺は駆け出した。

先を歩いていた女の人をひとり追い抜いた時、突然後ろから声をかけられた。

「あれ、孝支君……?」

驚いて振り向くと、さっき追い越した人が目を丸くして立っている。

「…あ、やっぱり孝支君だ…!」

その人は俺の顔を確認して、ぱっと笑顔になり駆け寄ってきた。

綺麗な人だった。多分俺より3、4コ年上。華奢な身体にまとったスーツはピシッと糊がきいていて真新しい。スカートからスラリと伸びた脚と汚れのない革靴。細い首元には小さいチャームのついたネックレスが控えめに光っている。胸より少し下まである黒髪は、後ろで一つに束ねられており、シンプルな髪型が、彼女をこざっぱりとした雰囲気にしていた。
/ 139ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp