第2章 二度目の再会
放課後が始まるチャイムが鳴り、廊下は授業から解放された生徒達の声であっという間に賑やかになる。私は職員室の自分のデスクで、明日の授業のまとめをしていた。
『野球部で甲子園目指しませんかー?』
『バスケ部で青春しましょう!』
『吹奏楽、入部希望者はこちらー!』
元気のいい声が、職員室の中まで飛んでくる。
その声を聞いて、隣の席の米田先生がポツリと呟いた。
「あぁ、そういえば今日からだったわね、入部受付…」
入学式から一週間。各部活は昼休みや放課後を利用して、新入生の部活勧誘をする。そして週明けーーー今日から入部受付期間に入ると武田先生が教えてくれた。バレー部も、確かマネージャーの清水さんがビラをコピーしに来ていたから、みんなで新入生に声をかけているかもしれない。
私はずっと疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「…あの、米田先生。私男子バレー部の担当になったんですが、女性教師が男子部の担当になるって、よくある事なんでしょうか…?」
米田先生はこちらを向いて「そうねぇ」と唸る。私よりもずっと年上のベテラン教師だ。烏野高校に務めてからの年数も、先生の中で二番目に長い。ゆったりとした口調で、米田先生は丁寧に答えてくれた。
「運動部には、体育の先生がついたり、スポーツ経験のある人が担当になったりするけど…。そういう人は強豪の部に回されるのよ。毎年全国大会に行ったりしててね。それ以外の部は、男女問わず手の空いた先生がつくことがほとんどね」
そう言って、米田先生は優しく微笑んだ。
「野村先生は学生時代は何部だったのかしら?」
「高校時代は美術部でした。なので、勝手が分からなくて…」
昔から運動が苦手だった私は、小学校のクラブ活動から大学のサークルまで、ずっと文化部一本で続けてきた。だから、体力にも運動神経にも全然自信がなかった。ましてや孝支君と同じ部となると、余計に迷惑はかけられない。ヘマをして恥ずかしい思いをしたくなかったし…。
副顧問に求められるのはあくまでサポートだと分かってはいるけど、全く知らない世界に飛び込んでいくのはいつだって怖い。だからこの前本屋でバレー入門書を買って、それ以来密かに勉強をしていたりする。