第2章 二度目の再会
新学期3日目。
春休み後のテストからやっと開放され、チャイムとともに俺はグッと伸びをした。
あれからみなみさんとは会ってない。同じ学校でも担当するクラスが違うと、すれ違うことすらないみたいだ。俺はその事にガッカリすると同時になんとなくホッとしていた。学校内でどんな顔をして会えばいいか分からなかったし、再会した日に抱いた淡い気持ちが、後ろめたいような恥ずかしいような、そんな気がしていたからだ。
ホームルームが終わってから、俺は同じクラスの大地に声をかける。
「大地お疲れ!部室行くべ!」
「おう。…そーだ、今日から顧問が変わるから、最初に先生が挨拶来るってさ」
「へー!誰になんのかな?」
「現国の武田先生」
「あぁ〜、武田先生か!山岡先生の代わりに一回だけ教えてもらったことあるかも」
「あと副顧問も変わるってさ。名前は忘れたけど…」
「ふーん」
部室に向かい、鍵を開ける。着替えに取り掛かったところで、賑やかな声とともに田中が入ってきた。
「ちーっす!お疲れ様ッス!」
「オース」
田中はドスンとカバンを置き、口笛を吹きながら早速着替え始めた。なんとなく誰がどこのスペースを使うか決まっている棚を見て、俺は呟いた。
「そーいえばもうすぐ1年入ってくるから、部室も手狭になるよなぁ…」
「まぁ…1年が入れば…だけどな…」
あからさまに重苦しい表情になった大地に、俺と田中は顔を見合わせた。慌てて田中がフォローに入る。
「だ、大地さん…!大丈夫ッスよ、俺も1年の勧誘手伝いますから…!!」
「いや、お前が勧誘するとむしろ希望者が減るから…」
「あり得るな…」
「そんなことないッスよ!」
「いや、これ以上部員が減ると本気で存続の危機になるから…気持ちだけ受け取っておく…」
「ヒデェ…」
そんな会話を聞きながら、俺はいつも“あの二人”が使っていたスペースを見る。大きめのバレーシューズと小さめのバレーシューズが、持ち主を待つように並んでいた。
抱えている不安はみんな一緒だ。大地も田中も、あの二人ともう一度コートに立ちたいはずだ。だけど、あえてお互いその事には触れないでいた。
俺は気持ちを切り替えるように、わざと明るい声で言った。
「まぁ、ビラも配ってるし何とかなるべ!」