第8章 Coffee Breakをしよう②
就寝を邪魔されたこっちの苛立ちなんか気付くはずもなく、西谷さんは続けた。
「こんな事もあろうかとな、これを持ってきた!!」
「ジャジャーン!」という大げさなセルフ効果音付きで、西谷さんはバッグから一冊の雑誌を取り出す。
「『ご当地美少女百選(宮城県版)』だッ!!」
「おおぉーっ、さすがノヤっさんだぜ!!」
その雑誌を囲んで、一人、また一人と人が集まる。床の間のそばで明日の打ち合わせをしていた澤村さんと菅原さんまで、話を中断してそっちを向いた。
「……なにアレ…」
「え、知らないの?ツッキー」
「全然。」
「10代後半〜20代前半の女子を特集した雑誌だよ。47都道府県分あって、宮城版にうちの学校の生徒も載ってるって話だよ」
「へぇ…」
大して興味をひかれなかった僕に、山口がわざわざ解説してくれた。それを聞いた澤村さんと菅原さんが、離れた所から会話に加わる。
「そーいや、随分前に清水も駅で声かけられたとか言ってたな…」
「そーそー。写真を頼まれて、断ったとか言ってたけど」
「ははは、清水らしいな。自分から露出していくタイプじゃないもんなぁ…」
「さすが潔子さんっ…!揺るぎないッスね!」
「我らが潔子さんに勝る女子がいるとは思わねぇ!…けど、この雑誌には宮城で厳選された美少女が揃ってる!!そこでだ。各自どの女子が好みか、順番に指差していこーぜ!」
(うわ…面倒くさ…)
関わらないように目を逸らしたのがまずかったのか、ニヤついた顔の田中さんが手招きした。
「月島と山口、お前らもこっち来い!」
「…すみません、僕そーゆーの興味ないんで」
「つべこべ言わず来いっつーの!」
「うわっ…」
僕らは半ば強引に引っ張られ、その輪に無理矢理押し込まれる。