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アイサレテル [R18]

第1章 目線




沈黙が流れる


強い風が吹いて薔薇のにおいを巻き上げる




「さっきの…その…ビックリしちゃったね」








「君は彼らが誰か知って…」





見上げると、もうそこには誰もいなかった。


見渡しても誰もいない。





むせてしまいそうなほどの

強い薔薇の香りを替わりに残して、彼女はいなくなった。




















次の日の朝、部屋の戸を叩く


執事から朝食が出来ているとの連絡で目が覚めた。




父と一緒に食堂へと向かう。





「おはよう」



射し込む朝日とコーヒーの湯気の向こうに

フェイ君の笑顔が見えた。




完全に寝不足。


眠たい目を擦りながら、椅子にかけるとキッチンの奥から奥様が出てきた。




「おはよう、ピーター君。眠そうね」



やわらかく微笑んで爽やかな挨拶をしてくれた。




「お…おはようございます……」











変な気持ちだった。




こんな聖母のような微笑みをしながら



何時間か前は、あんな姿をして



細いその手は、欲望をまさぐっていたなんて









なんだか信じられなかった。







ただの勘違いだったんじゃないか?



















「おや、素敵なスカーフですね。とてもお似合いですよ」






父が奥様の首に巻いたスカーフを誉めた。







「まぁ、ありがとうございます。主人から先日頂いたばかりのものでして」





嬉しそうな奥様と、嬉しそうにするご主人。








でも





そのスカーフの薄い生地の向こうにあった








赤い痕を僕は見逃さなかった。








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