第1章 目線
僕はもう見ているどちらに
脈を早められているのかわからなかった。
「あぁ……あああん、リヒト……貴方だけよ……っ…」
女が高みに近づいているのがわかった。
むんずとリヒトさんが後ろから女の髪をつかみ
頭を引っ張りあげる
首をあげた女の顔が見えて、
驚愕した。
奥様だった。
目の前の現実に信じられず僕は大混乱した。
親子じゃないか……
親子でセックスしている
いけないものの極みを見ているようだった。
でもどうみても二人は同意で交わっている。
ふたりで快楽の喜びに浸っている。
どう自分の中で処理していいのかわからなかった。
隣の彼女を見ると
彼女は無表情でリヒトさんたちをじっと見ていた。
じっ と、ふたりを見ていた。
間もなく
覗いているのがバレたら色々と大変に違いないので、二人が夢中になっている内に離れようと少女の手を引いてその場から抜け出した。
垣根の迷路を出て走って薔薇の庭まで出る。
上がった息を膝に手を着いて整えていると、少女が優しく背中を擦ってくれた。
「はぁ……。ありがとう。」
少女の顔を見るとまた無表情だったけれど、それでも相変わらず可愛くて
また女の子に触れられたことが照れくさくて、うつむいて赤くなってるだろう顔を隠した。
「君は、この家の子?」
彼女に話しかけると、
彼女は少し黙ってから小さく首を横にふった。
「じゃあ近所の子かい?こんな夜中にひとんちの庭に入るなんて……名前は?僕はピーター」
彼女は少し黙ってから、また小さく首を横にふった。
「名前は?」
答えないので繰り返し聞くと、
最後に少し困った顔をした。
「君………もしかして話せないの?」
沈黙が流れ、じっと僕の顔を見つめる。
また顔に熱がわいてきたので急いで目をそらした。
「ご…ごめん。喋れないならしょうがないね。」