第3章 秘密
翌朝、父と僕は帰った。
お土産に奥様が持たせてくれた
スコーンの美味しい匂いが車内に充満する
見送りに来てくれた
フェイ君、ルーク君が
また会おうね、と
玄関先で笑顔で手を振ってくれた。
フェイ君は最後、とても悲しい顔に見えた。
「美味しそうだな、食べてみようか」
スコーンにジャムを付けて父が頬張る。
うまいうまいと、くちゃくちゃする咀嚼の音。
食べるか?と差し出されたが、
ぱしんと、手を払いのける
何をするんだ!と父が怒ったが
構わず黙ってじっと外を見ていた。
父が呆れて、ようやく車内が静かになる。
カコ カコ カコ カコ ……
揺られながら
彼女の幸せを願った。