第3章 秘密
シャ ッ
カーテンを開けると気持ちのよい日差しが差し込んだ。
このところずっと天気がいい。
「ん…んん─……ピーター」
「カーテンを締めてくれ…」
深夜に部屋へ戻ってきた父が、眩しそうに腕で目を隠す。
「遅くまで飲んでるからだよ…」
「今日も、ご主人と出掛けるんじゃないの?」
父はご主人と一緒に仕事で人に会うだの接待だのと出掛けたりしていたが、僕にはただ遊んでいるだけにしか見えなかった。
これをきっと大人の付き合いと言うんだろうが、僕にはまだわからない。
直接太陽を浴びようと丸くせりだしたベランダに出る。
小鳥がさえずる、清々しい晴天。
気持ちよく首を回す。
(彼女のこと、誰に聞こうか。)
起きてもやっぱり一番に考えたのはアナリアの事だった。
聞くにあたって、思えばこの家は聞きづらい人たちばかりだなと困る。
(ルーク君に聞いてみよう)
まずは朝食を、と思って部屋に戻ろうと振り返ったとき
斜め下の階の部屋の窓が開いていて
カーテンがひらひらと漂っているのが見えた。
そしてその中に
伏せ目がちに外を見つめるアナリアを見つけた。
はっ、とする。
「アナリア…」
うっかり呟いてしまった。
ばっ!と、とっさに隠れる。
───なんで隠れるんだろう。僕は
「ピーター、朝食を食べに行こう」
!!
「ぅ、うん!今行くよ」
小声で返事をし、急いで部屋に戻った。
あそこが…彼女の部屋なのだろうか
(それにしても…)
朝から少し得をした気持ちになって
弾んだ気持ちで階段を下りた。