第3章 Ⅰ_突然は直ぐ眼の前に
太陽が傾き陽が沈み、周りが暗くなり視界が悪くなる中、道を複数の人間の影が音を立てず走る。
「は‥、ハッ」
先頭を走って居るのは全体的にサイズが大きい服を身に付け、帽子を深く被っているパッと見て性別が判断出来ない人間だった。
更にその後ろに続くのは黒いスーツ、そして黒のトレンチコートを羽織った男複数だった。
明るければかなり目立って居たが今は暗闇に包まれて居るので存在感は無い。
「‥此処は意味が有りませんね」
帽子を被った人間は小さく呟き、近くに有る古びたパイプに脚を掛け、そのまま勢いをつけて上へ飛ぶ。
音を立てずに着地しそのままビルの屋上を再び走り出す。
辺りに人の気配は無い。
帽子の人間は業と人気のない裏道を、そして出来るだけ足場の悪い処を選びながら黒い人間達から逃げていた。
しかしいつまで経っても撒く事が出来ない為、移動がしやすい場所に移った。
「(‥少しスピード速くしますかね)――ん?」
帽子の人間は脚は止めず横目で後ろを見る。
「‥有れは」
黒いスーツだらけの中に、一人だけ違う格好の人間が混じっていた。
それも、他は図体が大きいのに対しソレは小さかった。
「‥この気配、まさか」
帽子の人間は眉間に皺を寄せ更にスピードを速める。
「(‥面倒な事になりましたね。困りました)」
どう対処するか思案して居ると、周りに有った少し古びたビルの群が無くなっていた。
「あ、(どうやら裏道を抜けてしまった様ですね)」
そんな事を思っていると遠くで帽子の人間には聞こえていた僅かな足音や布の擦れる音が直ぐ後ろに聞こえてきた。
「やぁっと追い付いた~!も~、逃げるなんて酷いよ、シオル」
声を発したのは少年だった。
シオルと呼ばれた帽子の人間は盛大に大きな溜め息をし少年の方を見ながら口を開く。。
「‥それは貴方がストーカーみたいに、いえ、ストーカー以上に追い掛けまわすからです」
その言葉を耳にした少年はニコリと微笑む。
「だから言ってるじゃん。‘此方’に来れば全て解決だってね」
「嫌です」
少年の言葉に即答する。
其れを聞いた少年はニコニコと笑っている。
「ははっ、だよね~。じゃ無かったら何年も逃げ続けてないもんね」
シオルは先程よりも眉間に皺を寄せる。
そして何かを言おうとした瞬間に少年に遮られる。