第12章 猫王子と体育祭
『よーし、皆付けたねー?じゃあ第一種目の人達、行ってらっしゃい!!!ご武運を!!!!』
田中「俺達は戦争に行くんか!?まぁ俺らに任せとき!1着でゴールしたるわ!」
『言ったな!!1位以外だったら弁当のおかず1つもらうぞー!』
田中「あかん!こんにゃくは俺のモンや!」
『渋い!渋すぎるよ田中っち!つーかこんにゃくを選んで取る奴も守る奴もいねーよ普通!!!って…あーーー!!!王子爪つけてない!!何で!?』
「…部活の時邪魔になる」
『いや、外せるからな!?ちょ、勘弁してよ赤司~。こういう時こそ一致団結だぜ?リーダーが単独行動してどうするんだよ。まじ空気読めって』
…僕がこんなモノを付けれるわけがないだろう。いくら1日だとしても嫌だ。
『あ、まさか自分で出来ないとか?』
「そういうわけでは…」
『あーもう!じゃぁさっさと付けろよ!イライラするなあ!』
それでも動こうとしなかった僕にイライラしたのか、盛大な溜息をついた。そして、僕の手を…握って来た。
「っ!」
『もうあたしが付けてあげるからさ、大人しくしてろよ?』
近い。というか当たっている。体操服越しに伝わってくるの体温、そして直に肌に伝わってくる手先の温もり。心臓が煩くなる。
『うわっ!赤司手めっちゃ綺麗じゃん。何なんだよもう、神様不公平すぎんだろ』
口は悪いが丁寧な作業。いつの間にか僕の頭の中に抵抗という文字は消えていた。
『はい、完了!これで一緒だね!』
「…すまない」
『いいって事よ!あたしと王子の仲じゃん!あ、やば!もう1種目目始まる!あたし応援しなきゃ先輩に殺されるんだよね…ってなわけで行くよ、王子!』
自然に繋がれた手に、僕は嬉しさと不安を感じた。この手を通じて僕の高まった心拍音が、に届きませんように。