第5章 *the fourth would
いつものようにスーツに身を包み髪を一つに束ねる。
玄関に立って振り返るとエプロンを着けた一松が少し心配そうな顔で立っていた。
「ほんとに行くの?」
「うん。働かなきゃ生活できないからね」
これ以上心配かけないように精一杯笑顔を作る。
すると、不意に頬に私より少し高い熱が触れる。
「ムリして笑わないで…ってこんなニートには言われたくないかもしれないけど」
「…そんなことないよ。ありがとう、一松。それじゃあ、行ってくるね」
真一文字に引き結んだ口に軽くキスをしてドアを開けた。
「…いってらっしゃい」
さあ…切り替えよう、社会人なんだから。