第2章 bad end *the opening
「わ…見て見て!すっごいぶかぶか!」
全く手が出ないほどながい袖を揺すりながら持ち主を見つめればいつもの笑顔を返してくれる。
私が今着ているのは松の柄が入った黄色いパーカー。
十四松くんのパーカーだ。
今日は珍しく、本っ当に珍しく、十四松くんとお家デート。
他の5人は出払っているらしく家の中には2人しかいない。だから2階で2人でお菓子を食べながらだらだらしていた。
その後に私がパーカーに手を伸ばし、今に至る。
「凛ちゃん、小さいね!」
「む、十四松くんが大きいんだよ!」
少し頬を膨らませて言い返すと何を思ったか十四松くんはすくっと立ち上がった。
そして、近づいてきて、
「凛ちゃん可愛い!」
抱きしめられた。
「んぐっ! じ、十四松くん!くるしっ」
力を込めてぎゅっと際限なくされるもんだから苦しくて仕方ない。
「わー!ごめん、大丈夫?」
「ん、大丈夫」
心配そうに覗き込む彼が可愛らしくてにっこりと微笑む。
すると彼が微かに息を飲むのがわかった。
「どうしたの?」
「あっ、いや…その」
なんとも歯切れが悪い。こんな十四松くんは珍しい。
少し心配になって今度は私が彼の顔を覗き込む。
そこには私を見つめる熱っぽい瞳があった。