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誰も知らない。【気象系BL】

第10章 Fall to darkness… 


「…もしもし、」





「しょ…ちゃん…」

「ニノ? どうした?」


不機嫌に電話を取ると
受話器の向こうから聞こえてきたのは
悲痛なニノの涙声


「今、ドコ?」


「…家」


「すぐそっち行くから」



アイツの家を出た時
自宅とは逆方向に車を走らせたのは
偶然なのか、それとも…


この場所からニノの家までは10分足らず

いつもとは違うニノの様子に
ついさっき自分の身に起きたばかりの最悪の出来事のことなどすっかり忘れて
夢中でアクセルを踏んだ










散乱した500mlのビール缶
明らかに意気消沈したその表情から
何かあったのだということは伺える



「…呼びつけてごめん、」

「いや、俺が押しかけたんだし。
つか、駐車場から走ったら喉乾いたわー」

意図的に足をキッチンへ向けて。


「俺もビールもらっていい?」

「いや、だって翔ちゃん、車…」


言い終える前に冷蔵庫から缶を取り出し
プルタブをプシュッと開けると冷えたビールを喉に流し込んだ



今日はもう帰る気ないよ、という
無言の意思表示。
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