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第28章 少女のいる世界


「目が覚めてから、どこにいた?…悪い、俺が少し寝すぎちまってた。見つけてたたき起こしてくれてもよかったけど」

『…変、なの…っ…こうされる、の…好き…!誰にも、されなかった…目、覚めても…誰にも喜ばれないんじゃないかって』

本当は眠ったままの方がよかったんじゃないか、なんて。

「ん、知ってる。…ひとつ教えといてやるよ、お前のことまだ誰も抱きしめてやれなかったのは、皆俺が起きるのを待ってたからさ。最初は俺がするべきだって」

『!な、んで…?なんでそんな…』

「だって全員知ってるから、蝶が俺にこうされるのが一番好きだってこと」

あっさりとした答えだった。

ポートマフィアという組織の、私に会いに来た誰もが、喜びきってはくれなかった。
それは、この人がいるからか…そういうことだったのか。

誰にも思われていなかったんじゃない、その逆だ。
誰もが、私を思ってくれていた。

だから、抱きしめられなかった。
だから、触れられなかった。

この人からのそれを最初にすべきだと、誰もがそう考えた。

「蝶に一つ、まず教えておいてやるよ。…お前のことを愛してる人間は、お前の周りに溢れてんだ」

勿論俺が一番だがな、と言う彼に、自分の腕を回して抱きついた。

「…今日、どこで泊まる?宿を取ってもいい…落ち着けそうなところに出てもいいし」

『……お家、帰る。…中也さんがいるお家…帰るの』

「いきなり駄々っ子になるのは相変わらずじゃねえか…何も変わってねえよお前は。家な?分かった…飯はどうする?」

『…いらな「食わせるからな?」……』

どうしていたのだろう。
食に対して、執着しない質であったということは、この三日間で嫌という程思い知った。

私は、いったいどうやって…?

「…俺が作ったら、食べてくれる?」

『……いいの、?…私なんかのために、作ってくれる…の…?』

「おいおい、自分なんかなんて言うもんじゃねえぞ?お前のためにじゃねえと作らねえよ俺は」

『私のためのご飯なんて、作ってもらった事ないから』

言った後に、気が付いた。
多分、言わない方がよかったやつだ。

『…多分』

「…ま、食ってみろ。お前にとっちゃ美味くなるだろ…作って欲しかったらいつでも言えよ?いつでも…なんでも作ってやるから」

『!じゃ、じゃあ…あの…』

____甘いものが、食べたいです。
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