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第24章 繋がること


書類仕事を半分手伝って貰いつつ、たまに飲み物を淹れあったり、ちょっとした甘味をつまんだり。
相変わらず俺に懐き続けている様子ではあるが、それでも蝶とは仕事の相性もやはりいいらしく、さくさくとする事が無くなっていく。

そりゃあそうか、お互い書類仕事は得意分野といえば得意分野だし。
蝶は経験が大きいだろうが、俺に関して言えば最早蝶と一緒にいる時間を作るために気合いで身につけた結果がこれだ。

そしてそんなことならばとっくに理解しすぎてしまっている俺の嫁は、俺が何から順にどう手をつけていくかなどとうの昔からお見通しで、それらを効率よくサポートするように別の場所の仕事を進めていってしまう。

互いによく思って、言い合っていたことだ。

“天職”…まさにそれではないかと。
お互い性に合っている。

…なんて、考える度に思ってしまう。

「蝶…唐突な質問なんだが」

『?…質問ですか?』

ピタリとお互い手を止めて…しかし俺は、恐らく自分へと向けられたであろう彼女の目を視界に映すことはせず、心してそれを口にした。

「お前、本当は将来何になりたい?…何の仕事に、就きたい?」

返事はといえば…それはない。
だから気になって思わずそちらを見てしまった…そして、やはり聞くべきではなかったと、どこか他人事のようにそう思った。

蝶は、目を丸くして…顔を少し俯かせて涙を流していた。
何故なのかなんて、俺が予想していた通りなのだろう…分かっていて聞いている。

本音が聞きたかった。
本当の、心根の部分が聞きたかった。

素直になっていないと、絶対に答えてはくれないから。
俺の配偶者になるという目標が達成されている今、“将来”が指す意味はひとつしかない。

「……何言っても怒らねえし、否定もしねえよ…他の奴への義理なんてものも考えなくていい」

薄々俺も気付いている。
今の状態のこいつに、俺は“好きなこと”をしろと言ったのだ。

…今、この場にいること自体が答えのようなものなのだ。

『考え、…って…』

「自分がやりたいこと、あるんじゃないのか?…俺の事を気にしなくてもいい。やりたいことがあるなら…それを俺に言ってくれるんなら、俺はお前の言葉を否定しないし怒らない…悲しまない」

『!!!』

唇を…喉を、声を震わせて、ゆっくりと答えが紡がれる。


____中也さんと、仕事がしたい…
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