第22章 云いたかったこと
「蝶!?ど、どこか痛いか!?…そ、それか寒すぎたか!?中に入って暖まろう!!な!?」
『…い、やです…ッ』
「じゃあどうしたんだよいったい…い、嫌な事言っちまった…とか、か?」
放たれる言葉に首を横に振る。
こんなこと言えっこない…言ったところで気持ち悪がられるし、困らせる。
それに、もう一度こんなことを言うなんて失礼だろうし、言っちゃいけないことだと思うし。
「……思ってる事があるなら言えよ、せめて俺には…誰にも言わねえし、泣いてることも俺とお前だけの秘密だ」
『言え、ない…です』
「なんでだよ…俺に助けて欲しいって顔して泣いてんぞ?お前」
図星を突かれたような感覚。
胸の奥がドキリとして、思わず目を丸くした。
なんで分かるの…なんでそういう事を言っちゃうの。
『な…、な、…んで…っ』
「なんとなくだ…それに、いいかげん分かるようにもなってくる。家族なんだから」
『え…、…い、いの…?わ、私こんなので…こんな、どうしようもない奴…で…』
「いいのって、何がだよ?」
家族なんだから、なんて。
この人の口から今聞けるなんて思わなくて。
『だ、だから…その……ッ、…中也、さんの…』
「…俺の家族は、これまでもこれからも、お前ただ一人だけなんだよ。…覚えとけ」
『ぁ…ぅ…っ』
「そこで悩んでたのか?もしかして…心配症が出てるぞ」
嫌な事を言いそうになったのに、貴方の方からそんな風に言われると…どうも我慢が効かない。
どうしてこの人は、こんなにも私の心を揺さぶってくるのだろうか。
「……いいんだぞ、我慢しなくて。もうお前は自由なんだから…それにクリスマスだぞ、何でも強請っていいし何でも願っていい」
『ッ、…中也、さん……そ、の…っ』
「ん?…何だ?」
恥ずかしくて中也さんの方を向けなくて、それで顔を俯かせたのに。
なのに今度は私に外套を着せたまま、中也さんの方がしゃがんで目線を合わせてくるから。
唇も喉も震わせながら、か細い声にはなってしまったけれど。
『…中也さんに、その……わ、たし…』
「……おう、俺に…?」
『も、っと…その………』
____触れていたい。
口にした直後、彼の目は動揺する…どころか微笑ましそうに緩まった。
それから、自分もだと言うように私に腕を回して引き寄せて。
まさか自分から強請るなんて…