第22章 云いたかったこと
『………、…?』
何してたんだっけ…なんで寝てたんだっけ。
なにも覚えてない。
何かあったから寝てたはずなのに……何かあったのなら、こういう時はだいたい…
「!!…蝶…、目…覚めて…!!」
『?…目……?』
「森さん、目覚めました!!」
「!良かった…っ、身体は!?冷えきっていただろう…寒くないかい…ッ?」
だいたい、嫌な夢に起こされるはずなのに。
安心する香りに包まれていて、嫌な気分になんかならなくて。
しかしそれと一緒に気が付いた。
自分のした事…思い出した。
『中也さ…ッ!?…な、んで…!?…っ、なんでここに…』
「なんでって…お前が能力使ったせいで血液が足りてねえって聞いて…」
『!!…なんでこんな奴のこと生かそうとなんかするの!!?…ダメ、なのに…っ、私いい子じゃないんだよ!?幸せになんかしちゃダメな子なの!!分かってるの!!?』
「落ち着けって!!…どうした、そんなに熱くなって……お前が幸せになってくれねえと俺が幸せになれねえのが分かってんのか?お前」
そういう問題じゃない…だって、こんな人殺し…
ものの数秒で、簡単に大勢の命を奪えてしまう奴なのに。
その理由を、全て貴方のためだと言い聞かせて…最低なことに利用した奴なのに。
『わ、私…なんで…、?幸せ…って、私、こんな…ただの___』
「お前が俺のために色々頑張ってくれてんのは分かってるっつってんだよいい加減!!!」
『!!?…な、…にが…っ?…ッ!森さん!?』
傍に立っていた森さんの方を向くと、申し訳なさそうな顔をされる。
騙されてた…?私が?
嘘、ついてたの?
「…すまない……けど、中也君が納得していなかったから。…君がここに入れと言われた時の事」
『!!言わないでって、あれだけ…ッ』
「黙っていることがその人のためにならない事もあるんだ……君も最近分かっただろう」
それとこれとは話が別だ…全然…
私のは、中也さんに気を遣わせたくなくて…心配させたくなくて、それで…?
聞いたことのあるような言い回しに、疑問を持った。
違う、中也さんのは私を喜ばせるための…私のなんかとは全然違う事で…
「蝶」
名前を呼ばれて身を固くする。
「…お前が優しい奴なのは分かってんだ。だから…俺が無理矢理、森さんに問い詰めた……大丈夫、俺がお前を悪い奴にはさせねえよ」