第22章 云いたかったこと

『嫉…妬……？…久しぶりに聞いた、そんなの……え…っ？私が、嫉妬…？なんで？誰に…？』

「君が嫉妬をして苦しんでいるんだよ…恐らく些細な相手でもしてしまうであろう嫉妬だけれど、今回は特に……年の近いエリス嬢にに妬いてしまったんじゃあないかな」

『…そ、んな…ことで嫌だなんて……っ、ど、うしよう太宰さん…私、早く中也さんに謝「はいストップ、謝っちゃダーメ！」！？な、なんで…！？』

君はもっと肩の力を抜きなさい、と太宰さんは言う。

「あれだけ普段から君に甘えるよう言っておきながら、浮気まがいなことばかりするあいつが悪いのだよ」

『…中也さんが悪いことなんか何も「はいはい、中也さんでもダメなところはあるんだよっていうことから覚えようか蝶ちゃんは」……中也さんは、ダメなんかじゃない…』

「……いきなり離れて構ってもらえなくて寂しかったのに？ずっとあいつのこと見てたじゃないか」

『…？………寂しかった…の…？』

ぽつり、声になったそれに、やっとのことで自覚した。
羨ましかったのも、嫌だったのも、もやもやしてたのもズキズキしてたのも、全部それが発端だった。

寂しかった…けれど、それがそうだと分からなくて、小さな違和感が積み重なって。
感情の名前が分からなかった私には、“嫌”なものであるということしか分からなくて。

「…いい子すぎるよ、本当に。君がいつか寂しさに押しつぶされてしまいそうで、私は心配だ」

ふわりと両手で抱き寄せられて、何故だかすこし心が埋められたような気がした。

『…悪い子…です。……太宰、さんが優しいだけなのに…っ、なん、でこんな…ｯ』

自惚れてしまいそう。

だけど、私だけに向けられるこういう愛情を覚えたばかりの私には…ちょっとした愛情の向きの変化が、怖かった。
寂しかった。

隣に私がいたのにって、どうしてら離れていっちゃったのって。

「うん、もっと悪い子になっていいんだよ…君はまだまだいい子だから。そんなに頑張らなくても、大丈夫…誰も君を見捨てない」

『ｯ…！……中也さ、んも…っ？頑張らなくて、いいの…？我慢しなくて…悪い子になってもいいの…ｯ、？』

「だれも蝶ちゃんを責めないよ…そんな奴がいるなら、例え中也が相手でも私が倒してあげるからね！」

重たい重たい重りから、ほんの少しだけ解放されたような気がした。