第22章 云いたかったこと
「まあ、今日のところはこれくらいで許してあげるわ」
「あ、ありがとうございます…っ」
「あーもう、またエリスちゃんは中也君の髪にリボン付けて…」
「いいじゃない、罰よ、罰!…!リボン…リボンといえば、蝶は髪に何か付けたりしないの?」
『へ…っ?』
ずいっ、とこちらに寄ってきて顔を寄せてくるエリスちゃん。
一瞬ドキリとしたけれど、それを悟らせないように平然を装った。
「折角綺麗な髪な上に似合ってるのに…下ろしてるだけなんて勿体ないわよ?何か付けたり、結んでみたり…絶対可愛いのに…」
『?…私にはそういう言葉、似合わないから……』
「似合わなくないわよ、ねえオサム?」
「うん、寧ろいつでも蝶ちゃんは可愛い♡なんならツインテールにでもしてみるかい??絶対似合…」
『……いい。…髪、とか…別に。……どうこうするほどのものじゃ、ないですし』
私にとって、私の髪は…特別醜いものだから。
この世界にやってきたところで、やはりこんな色の子はいなかった。
そしてやはり、この色は気味の悪いものなのだと教えこまれてきた。
今更それをどう繕ったところで、私の気味の悪さは変わらない。
「?何言ってんだよ、どうこうしねえと勿体ねえだろ、そんな綺麗な色した……!?」
いいや、ただ一人、ここにとんでもない例外がいることを忘れていた。
サラ、と一束手に取られる。
それと同時に、当然のようにしてそう言い放つ。
しかしそれに私は過敏に反応して、バッ、と勢いよく…髪を振りほどくようにして、顔をその人から思いっきり背けた。
…あれ、何してるんだろ私。
「おや…?」
「ち、蝶…?」
「…」
『……ごめ、んなさい……あ、あの…その…っ』
顔を見るのが怖い。
弁えてるからこそ、自分がいけないことを望んでるって分かってしまって。
____他の子の方が、楽でしょう…?
なんて。
「い、いや…謝らなくてもいいんだが…その、嫌だった…か?」
『…ッ、?』
はい、ともいいえ、とも…頷くことも、首を横に振ることさえも、できなかった。
なんでだろ、ううんって言わなきゃいけないのに。
違うって伝えないと、悪い子なのに。
『……わ、からない…っ…?』
「?…分からないって、何が……」
『嫌、じゃないのに……な、んか………嫌…っ』
初めて、中也さんに嫌だと口にした。