第18章 縁の時間
『中也さん中也さん、外行きたい』
「中也さん呼びやめたら考えてやるよ」
『…中也さんって、嫌?』
「嫌じゃねえけど…折角恋人になってんのに、前と一緒じゃなんかあれだろ?」
『………中也、外行きたい』
「ちゃんと浴衣着てからな」
じゃあ中也が着せてよ、と我儘言ってみれば、中也は俺?と首を傾げながらも私の手を取る。
「こっち来い」
『…中也に服着せてもらうの好き……♪』
「知ってる。前にも言ってたろ同じ事」
『そうだっけ…凄いね、なんで覚えてるの?』
「……理解してやれねえでもねえしな」
浴衣を着せる手際が良くなった中也は私に着せてから、出来たぞ、と頭を軽く撫でた。
しかし私は暫く呆然としていて、彼の言葉の意味を理解する。
『…じゃあ蝶が中也の浴衣着せたげる♪』
「まてまてまて、どんな思考回路でそうなったか薄々検討はつくが大丈夫だから!つか俺は着崩れただけでもう直してるから!!」
『蝶も中也の親なの!するの!!』
「お前は俺の何なんだよ!?恋人だろうが!!?」
中也の言葉にピタリと止まる。
それもそうか、親になるのは中也が私よりもちっちゃくなっちゃったらの話だった。
『……ん、中也好き』
「…ほんと単純……すぐ擦り寄ってきて猫みてぇ」
抱き着きにいくとまたよしよしと撫でてもらえて、ギュ、と腕を回してもらえて安心した。
ああ、そっか。
この人は私が思ってる以上に私の事が好きなんだっけ…
『…私も中也の事愛してるよ』
「!…そういう不意打ちはダメだろお前……だからキス魔になるって分かんねえの?」
『外行くのが先。クレープもっと食べる』
「…………了解」
くしゃりと髪を撫でてから、中也が立ち上がる。
それに合わせて立とうとしたところで、力が抜けて転けそうになった。
「…蝶?」
『え…うん、なんか腰抜けちゃいそうになっちゃった…えへへ』
「ならいいが………お前、何か身体が変だとかいつもと違うとか感じたらすぐに言えよ。少しの事だけでもいいから」
『へ?は、はい…ッ?……な、なんか違和感…?』
言われてみれば、お腹の少し下あたり。
なんか、あったかいようなフワフワしてるような…何なんだろう、これ。
「…苦しいとか、気分が悪いとか…痛いとかは?」
『無い…と、とりあえずクレープ食べたいな…?』
「………」