第18章 縁の時間
乱歩さんがまた自分勝手なように装って、探偵社の皆を引き連れて私達の部屋を後にする。
それから丁度タイミング良く女将さんがやって来て料理を下げてくれ、お布団までもを敷いて下さり、場は整った。
全部、そうだ。
今日皆を引き連れて来てくれたのも…同じ宿に泊まれるように恐らく裏で動いていたのも、さっきの私のフォローを入れるような発言も。
全部全部、乱歩さんの思惑だ。
___“きっと悪いようにはならないから”___
口をキュ、と引き結んで、中也の着ている浴衣の袖を引いて、部屋の明かりを消す。
「!?…おい、蝶?もう日が落ちかけて……『大丈夫、今日は月が明るくなるはずだから』…?お、おう…?っていきなりどうしたんだよ」
『…………お話、あるの』
「…話?」
とりあえず布団の上に座ってもらってから、まずは一言、ちゃんと言った。
『…っ、ごめんなさい……ッ…私、中也さんに隠してたこと…あって…』
「隠して……って、は!?いやいや、謝んなくていいだろ、人間誰しも隠し事の一つや二つくれぇ…」
『今、から話すから…今からのも含めて、ごめんなさい…』
声が震える。
夢を見たときから、言わなくちゃって思ってた。
他の誰かに…あいつに言われるくらいなら。
それなら、自分から伝えたい…自分から伝えなきゃ。
中也…中也さんは私の背に手をあてて、ゆっくりでいいからと柔らかい声で言う。
こんなにも残酷な事があるだろうか。
今私がこんな生活を送れるのも、学校に行くのも、この人に何も気にしないで甘えられるような状況なのも…
こんなにもありがたい生活の基盤が、こんなにも皮肉な事態から始まっていたことだなんて。
いったい誰が話したい?
いったい、誰が隠したくない?
だけど名探偵から散々に言われてきた事だから。
あの人の言うことは外れないから。
『……中也さん、さ…覚えてる?私の事連れ去ってった時の事』
「!あ、ああ…そりゃあもう鮮明に……」
『…水槽の中で私を初めて見た時のことも、覚えてる?………私が、初めて中也さんと出会ったの…私、今よりずっとずっとちっちゃくて…』
「確かに子供の姿だったが、朝も言ったけどお前は何も気にしなくて___」
違うの
気にするのは、私じゃないの
私、ちゃんと貴方に伝えなきゃ…
「何、言って…」
『…_______』