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第18章 縁の時間


____音もなく崩れ去ったガラスの檻。

そして私を連れ去ったあの人…愛しい愛しい、強い彼。

悲しくはないし、怖くもない。
けれど私が…私達だけが知っている事が一つある。

頭の良すぎるある名探偵はこう言った。

「彼には伝えておいた方がいい」

しかしその時、彼とは会うことが出来なかった…会えるようになるだなんて、思ってもみなかった。

だから言わなきゃ、言わなくちゃって…悩んでる内に恋人にまでなってしまって。
私の気にするこの身体…私が気にするこの小さな身体を受け入れてくれる彼に伝えるのが怖くて、伝えた後の彼の心境を考えると、やはり言おうにも言えなくて。

名探偵は、そんな私にこう言った。

「伝えた方が、君のためだ……そして何より彼のためだ」

『…言えませんよそんな事。私だって、今まで考えないようにして生きてきて…』

「それをこの四年間の間に、突きつけられてしまったんだろう?事実として、証明されてしまったんだろう?」

『…』

「確かにその彼は君を助けたいい人なのかもしれないね。だけど、それなら…本当にいい人はなれないよ。事実はちゃんと、伝えるべきだ」

そして今日も、夢の中でまた繰り返す。

また、あの日の感覚を思い出す。
悪いのは彼じゃない、分かってる。
だから言えない…言わなきゃいけない。

だって、もうこんなにも絆が出来上がってしまっているのだから。
これ以上になる前に、ちゃんとした関係を築かなければならないのに。

また考えてしまう、悪い癖。
言ったら彼が悲しんでしまうから…隠していたことを怒って、自分を責めてしまうから。

だけど名探偵は言う。

「今日にでも、伝えてみなよ…悪いようにはならないから。今日を逃したら、本当に後悔するよ。他の誰かから言われるのは、一番辛いだろう?君も…素敵帽子君も」

貴方は悲しみ、自分を責める。
それだけはもう、分かってしまう。

お願いします、どうか自分を責めないで……責めるなら、私を責めてください。
八つ当たりでもなんでもいい…そしてどうか、離れないで。

怖くて怖くて、手を握ってとお願いした。
これで離れるようなことにでもなれば、きっと私はもう戻ってこれなくなってしまうから。

だからキスをお願いした。
だから、触れていてとお願いした。

食欲なんて、もう無いに等しいものだった。
悪く、なりませんように
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