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第18章 縁の時間


『ふにゃぁ…ぅ……』

「おい、昼寝にしては遅…つうか風呂で寝るな、風呂で」

結局あれから入った露天風呂にて。
暗黙の了解としてお触り禁止を前提に入っているのだが…俺の膝の上でうとうとしながら欠伸をする少女。

いや、お触り禁止なくせしてこんな至近距離で密着してくんのもどうかと思うんだが今回のこれは…いや、今回のこれもただの天然だ。
タオル巻いてっし。

いや、これはこれでいいもんがあるからいいのだが。

『んん…気持ちよくてつい………温泉久々〜…♪』

「気持ちいいのは良かったが…寝るなよ?寝たら晩飯俺が全部食っちまうぞ」

『いいよ別に、ご飯そんなにいらな「ジェラートも抜きな」起きます』

一瞬で決着が着いた。
なんて扱いやすいんだ。

と思ったのも束の間、ある事に気が付いた。

「そんなにいらねえって……え、お前今日のは食えよ?食わねえと勿体ねえにも程が…」

『……こういうところの、量多そうなイメージ…』

「意地でも食え、旅館の三大要素の一つだろ」

三大要素?と首を傾げる蝶に、超私的な旅館の三大要素を列挙していく。
綺麗な景観を巧みに使った間取りの部屋に、日々の疲れや鬱憤から解放してくれるような癒しを与える温泉(俺の場合は常日頃から癒されているのだが)、そして食!!

これを食わねえだなんてこと、損にも程があるってもんだ。
いや、まあ蝶の胃袋事情と今ではかなり軽度になった拒食症を考えれば無理強いは出来ないのだが…たまにはこういう場所でゆっくり良いものを食べるのも良いだろう。

俺の場合は常日頃から美味いもんばっか食わせてもらってるんだがな。
勿論愛してやまない大天使蝶様による手料理のことだ。

それに今まで他にもっと解決しなきゃならねえ事が多すぎてこんなところに連れてきてはやれなかったんだ、勿論親心というものもある。

『ち、中也ってほんとに好きなんだねこういうの…?』

「……あ、ああ…けど、まさかこういう所に誰かと二人で来れるような日が来るなんて思ってもみなかったんだがな」

『え…?』

「…そのままの意味だ」

ありがとう、と礼を言うのは、今となっては少し違うような気がしてきた。
勿論蝶からそう言われればこちらこそ、と言えるのだが…もう、お互いただそれだけの関係ではないはずだから。

俺の、かけがえの無いたった一人の存在。
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