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第12章 夏の思い出


お昼になるまで大人しく横になっていて、首領が様子を見に来たり芥川さんと樋口さんが差し入れをくれたり、たまに中也のデスクの方に寄っていって無理矢理ベッドに追い返されたりとゆっくり過ごしていた。

そんな中、問題は発生する。

『やだ、絶対に嫌』

「頼むって、お前ふらふらしてんだから大人しく待って『や、だ』蝶さんお願いしますって…!!」

中也の手を握って、私の元から離れさせないよう繋ぎとめる。
そこまで力を入れているわけでもないのだけれど、私が折れるまでこの人は無理矢理どこかに行ったりはしないから、無理せず意志だけ伝えている。

『お仕事邪魔せずいい子にしてた』

「ベッドから脱走してばっかだった奴の何がい『じゃあ悪い子の蝶は中也の事話してあげない』だあああ!!!昼飯作りに厨房にくらい行かせろっつの!!!!」

ビク、と手を震わせて、思わず何も言えなくなった。

勢いよく言われるのにはやはり慣れないし、何より今はどうしても離れたくない。
この人と離れたくない…一緒にいたい。

熱がある時に、誰かと一緒にいられるのは幸せな事だから。

ほんの少しの間であっても、もう一人でなんていたくない。
なんて我儘だ、我ながら面倒にも程がある。

前にいい加減にしろと中也に言わせてしまった時の事を思い出し、スラスラと口に出していた言葉をぐっと飲み込むことを思い出した。

「だいたいお前用のもんは俺が作るんだから、ちゃんとしたもん作ってやらねえと……蝶?」

『んーん、なんでもない』

そっと中也の手を離し、自分の元に引こうとした。
しかしその手を、今度は何故だか中也の手によって包み込まれる。

「…大人しく座っとくってんなら着いてこい。後辛くなった時に俺にちゃんと伝えれるって約束すんなら来てもいい」

『!いいの?一緒いる?中也一緒??』

「絶対椅子に座っとけよ。さっきまでみてえに俺の手伝いなんざしようとしやがったらすぐに異能で縄無しバンジーだからな」

『それ真面目に怖いやつ』

「安静にしとけ阿呆、折角朝よりちょっとマシになってきてんだから」

ポンポン、と軽く私を撫でてから、掛け布団を捲って中也は腰を屈める。

「歩けるか?掴まってていいからゆっくりでも…それとも背負っていくか?」

『歩いて行くー…そっちの方がいっぱい中也の事見れる♪』

「ゼリーも俺が作ろうか」
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