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第12章 夏の思い出


「お前体質のせいで薬効きにくかったよな確か…とりあえず首元と頭と脇と冷やすぞ。用意してくっから布団かぶって安静に……」

思わず掴んでしまった中也の服の裾。
ク、と引っ張られて、離れて行こうとした中也はそれに気がついて私を見る。

無意識だった。
引き止めちゃった。

私が勝手に熱を出してしまっただけなのに。

『…ぁ……ごめんなさ…っ、?』

「…いい。風邪ん時は人肌が恋しくなるっつうからな……お前なんか特に、そうだろ」

手を離そうとするとその手を取られて、触れられた感覚にまた身体が反応する。
しかし風邪だと自覚をすると少し意識がそちらに逸らされ、敏感すぎたのもマシになってきた。

「吐き気とか気持ち悪さとかはねえか?」

『ん…中也、風邪移ってない?』

「俺は頑丈に出来てんだよ、んなもん誰かから移されるほど柔な身体じゃねえ」

『…ねえ、馬鹿は風邪ひかな「お前今すぐ氷入りの水風呂にぶち込んでやろうか?」中也が言うなら入る……』

寝間着の袖から腕を抜こうとすると、待て待て待てと中也が慌てて止めに入った。
それに小首を傾げて見つめると、顔を青くして中也は蝶、と口を開く。

「お前、流石にからかうにも限度ってもんがあるだろ?」

『?中也が言うことならちゃんと素直に「お前まさかそっちに集中力発揮してやがんじゃねえだろうな!!?」…ちゃんと中也って呼んでるし、素直に言ったよ?』

ダメだこいつ…と頭を抱えつつも、中也はよしよしと私の頭を撫で続ける。
ダメだとは何だ、ダメだとはと思いつつも、反抗するわけにもいかず、目を丸くするばかり。

「……!…中也さん好きって言ってみ」

『中也さん好き』

「世界で一番愛してる」

『私は全世界の何よりも中也さんのこと愛してる〜』

ヘラリと笑顔になって抱きつけば、何故だかブワッと中也さんは泣き始める。

「くっ…、中也大好きって言ってみ」

『今度は中也なの?変なの…中也大好き』

「スラスラ言えたじゃねえか蝶おおお!!!!!」

わっしゃわっしゃと撫でくり回され、わけも分からずとりあえず嬉しくなった。

『これ好き〜…いっぱい充電してから学校行く』

「おうおうそうだな、好きなだけ充電してから学校に…………ってお前は今日は休むんだよこの馬鹿!?何誘導しようとしてやがった!!」

『??』

「クッソ可愛いわ…クソ…っ!!」
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