第6章 オレンジ
プロに進んだ影山と、東京の大学に進学した月島。
二人を導いたものは、過去のものになった。それは影山自身もよく分かって、だから別れたはずだった。
それでも忘れられなかった。好きだと言ったあの時を、毎日がたのしいかったあの時を…。
影山はずっと、もう二人の明日が無いことを隠してる。月島に返せるなにかを探してる。
「元気か?」
「今も、笑ってるか?」
何度も聞きたかったこと。
それでも何より聞きたいのはー聞きたかったのは、
「他の奴を、ちゃんと愛してるか…?」
かつて王様と言われた少年の、最後の最大限の優しさ。
でもそこには寂しさと愛おしいさが入り交じって、来るはずのない二人の時を隠してるようだった。