第14章 あなたとの未来を。
ヒュゥゥゥー…
風が強く吹き、深い霧に覆われた屋敷に殺生丸は足を踏み入れた。
この場所にはあまり近寄りたくはない。
階段の最上に、ご母堂の姿が見えた。
「早かったな、殺生丸。」
ご母堂はゆっくりと殺生丸に視線を向けた。
「わざわざ何の用だ。」
不機嫌そうに言う殺生丸。
「屋敷が完成したのだろう。この母を招いてはくれぬのか。」
母親の言葉に、殺生丸は何も返事をしない。
「…まぁ良い。今日呼び出しのは、そなたの
婚儀についてだ。」
殺生丸は表情を歪めた。
(え?!こ、婚儀?!)
殺生丸の隣にいる邪見も驚いた表情をした。
「何の話だ。」
険しい表情で睨みつける殺生丸。
「母をそんな目で睨むな。そなたにふさわしいおなごを用意してやったぞ。」
母の言葉に呆れた殺生丸は、何も言わずにその場を立ち去った。
「待て殺生丸。受け入れぬという事か。そなた一族の血を絶やす気か…?」
「そうだ。」
振り返えらずに言うと、殺生丸は飛び立った。
「はぁ〜、やれやれ。本当に可愛げがない。」
ご母堂はため息をついて言った。
「あの、ご母堂さま。」
「何だ?」
殺生丸の屋敷に来た家来が前に出た。
「殺生丸さまのお屋敷に行った際、気になることが……。微かですが、屋敷の中から人間の気配を感じました。」
「………」
家来の言葉に、ご母堂は目を細めた。