第2章 深まる関係
「って事で、一緒に羽山君の見送りに行こうね。」
紫音はあたしにスマートフォンを返した。
「うん。今度の日曜日の午前10時発の新幹線だって。」
「わかった。それにしても羽山君は本当に可愛がり甲斐のある後輩だよ。」
「からかい甲斐のある、の間違いじゃないの?」
紫音は心底楽しそうに笑った。
時計を見ると午後5時になるところだった。
「そろそろ作り始めるか。」
あまり遅くなって、門限ギリギリに慌てて帰るのも嫌だった。
「じゃあ俺はお米洗うよ。」
「ありがとう。」
二人でキッチンに立っていると、突然後ろから「パシャッ!」という声が聞こえた。
紫音と私が振り向くと、花音さんが指をカメラ代わりにして写真を撮る真似をしていた。
指で作った四角の隙間から、あたし達を覗いている。
「パシャッ!パシャッ!」
本人は本当に写真を撮っている気分なのだろう。
その無邪気な姿に思わず笑みが溢れた。
「二人でキッチンに立ってると、旦那さんとお嫁さんみたいだねー。」
言ってる本人は深くは考えていないのだろうが、あたしの方が恥ずかしくなってしまった。
紫音は特に意識していないのか、花音さんを見て微笑んでいる。
「お嫁さん、今日のご飯は何ですかー?」
「か、カレーライス…です。」
「カレーライス!私も大好きよ。」
花音さんは嬉しそうに笑った。