第2章 深まる関係
スーパーで買い物をして、紫音の家に向かった。
「あら、七瀬ちゃん。こんにちは。」
玄関に入ると花音さんが来た。
「こんにちは、お邪魔します。」
「ただいま、妖精さん。今日は七瀬が夕飯を作ってくれるよ。」
紫音がそう言うと、花音さんの顔が輝いた。
「本当に?嬉しい。蝶々さん達に自慢してくるわ。」
そう言って、花音さんは庭に向かった。
リビングに入り、紫音は材料をキッチンに置いて戻って来た。
二人でソファーに座り、庭で蝶に話しかける花音さんをしばらく見つめていた。
先に口を開いたのは紫音だった。
「羽山君、いつ長野に行くのかな。」
「分からない。大学辞めてから一度も連絡して来ないし。」
「そっか…まぁでも、羽山君の行動力には少し驚いたね。」
「でもあたしは、シュリが本当のこと知ったら気に病むと思う。シュリには休学したって言うから口裏合わせてくれって言われたけど…やっぱり大学辞めるなんてさ。」
「…七瀬、本当は寂しいんじゃないの?」
「え?」
「シュリは事情が事情だし仕方ないけど…羽山君まで長野に行っちゃうのが。」
心にチクリ、と何かが刺さった。
「そ、そんな訳ないじゃん!確かにシュリが長野に行っちゃったのは寂しいけど、徹なんか居なくなったって寂しくも何ともないよ!」
また、強がってしまった。
これは私の悪い癖だ。
本当は寂しい。
大学で一人になる事が寂しいのではなく、二人と離れてしまう事が。
だからと言って二人と心の距離ができるとは思わないが、私の日常を鮮やかにしてくれていた二人が居なくなってしまうことが寂しかった。