第2章 深まる関係
徹はその日を最後に大学を辞めた。
引っ越しの準備など、色々と忙しいのか連絡一つ寄越さない。
シュリと徹が居なくなって、あたしは大学で一人ぼっちになった。
毎日楽しかった大学生活は、二人が居てくれたから充実していたのだと痛感した。
ある日、一人で食堂で昼食をとっていると、正面の席の椅子を誰かが引いた。
顔を上げると紫音が立っていた。
「紫音…。」
「一緒に食べてもいい?」
「うん!」
嬉しかった。
周りはみんな、友達と楽しそうに過ごしている中であたしは一人だったから。
「七瀬のお弁当凄いね。彩りも綺麗だしどれも手作りだし。」
「お母さんに作ってもらってるんだけどねー。」
父も、同じお弁当を持って仕事に行っている。
母が毎日欠かさずお弁当を作るのも、彩りも良くて全て手作りなのも、父のためだ。
冷凍食品を使ったりしたら父に怒られる。
あたしのお弁当はついでに作っているだけ。
紫音のお弁当は、お弁当箱半分にご飯、それと玉子焼きと冷凍食品が二つ入っていた。
「七瀬のお弁当と比べると質素だよね。」
紫音は笑いながらお弁当を食べ始めた。
「そんなことないよ。自分で作ってるんじゃないの?」
「うん、そうだよ。よくわかったね。」
「見た目からして、男の料理って感じだから。」
「簡単な物しか作れないからさ。いつも冷凍食品に助けられてるよ。」
苦笑いをする紫音。
ふと、気になった事があった。
「夕飯とかはどうしてるの?紫音のご両親、忙しいみたいだし…。」
「出前取ったり、コンビニとかスーパーで何か買ったりしてるよ。」
「ずっとそうなの?」
「日本に来てからはそうだね。海外で生活してた時は、まだ母親は専業主婦だったから。」
「そうなんだ…。」
あたしの家は毎日当たり前の様に母の手料理が出てくるから、少し驚いた。