第2章 深まる関係
「七瀬、俺大学辞めてシュリの所に行くから。」
「はぁ!?」
突然そんな事を言うから、驚いて食堂に響き渡るくらい大きな声を出してしまった。
「何言ってんのあんた…シュリの所に行くって、長野に引っ越すってこと?」
「うん。」
「それにしたって何で大学辞めるのよ。休学じゃ駄目なの?」
「俺はシュリみたいに正当な理由があるわけじゃないから休学申請通らなくて。だから辞める。」
徹の気持ちは分かる。
少しでもシュリの傍に居てあげたいのだろう。
シュリだってその気持ちは嬉しいだろうけど、大学を辞めてまで来られても喜ばないと思った。
「そんなことしたってシュリは喜ばないと思うけど。真面目なあの子のことだから、あんたにそこまでされたら逆に気に病むと思うよ。」
「もう決めたんだよ。」
「あんたの自己満足のためにシュリの悩み増やすわけ?」
わざと厳しい言葉をかけた。
しかし、徹の意思は変わらなかった。
「…この前、エミリから電話がかかってきて。シュリが抗がん剤の副作用で辛い時に言うらしいんだよ。俺に会いたいって。それに…万が一シュリに何かあった時、埼玉に居たらすぐに駆け付けられねぇし。だから俺は長野に行く。」
「万が一って…縁起でもないこと言わないでよ!」
「俺だってそんな事考えたくねぇよ!!」
ずっと静かに話していた徹が感情的になった。
驚いて何も言い返せずにいると、徹は拳を強く握りしめた。
「でも、それがシュリの現実なんだよっ…。」
徹は大きな溜め息をつくと、あたしを見つめた。
「シュリには休学したって話すから、もしその話になったら口裏合わせて。」
「…わかった。徹の意思は変わらないみたいだし、これ以上あたしが口出すことでもないしね。」
「悪いな。」
「謝らないでよ。シュリだって徹が傍に居てくれるのが何よりも心強いだろうしさ。」
そして徹はその日、久しぶりに写真部に顔を出した。
先輩達に大学を辞めて長野に行くことを告げた。
相田先輩と小山先輩は泣き出してしまい、田中先輩と桐生先輩も複雑そうな顔をしていた。
紫音だけが、表情一つ変えずに徹を見つめていた。