第5章 同盟
高尾の一言に目を見開く緑間。
「あ、ありえないのだよ…。」
「だろうな…。」
高尾は笑いながらそう言っていても、今でも消えそうな声であった。その様子から緑間は、溜息を1つ吐き出して高尾に言った。
「お前は、こんな時に嘘を付く奴ではないと思っているのだよ。」
緑間の一言に目を見開く高尾であったが、やがてゲラゲラと高尾にとっていつも通りの笑い声を出す。緑間は高尾の様子から不快に思ったのか眉間に皺を寄せて嫌な表情を見せる。高尾に背を向けて部屋から出ようとした時、緑間はもう一度高尾の方を見て言った。
「明日、高尾が治療を受けた場所をオレに教えるのだよ。」
それだけを伝え、高尾の部屋の扉を完全に閉める。それも高尾の返事も聞かないまま。どうやら、高尾には拒否権というのがないらしい。
その事に高尾は思わず苦笑を浮かべる。そして高尾は、もう一度、窓から見える空を見る。高尾の脳裏で、フードを被った結紀の姿を思い出していた。
―――おかしいな。アイツに会いたいって思っちまう…。
高尾の中でどころか不思議な思いが宿っていた。結紀の正体を分かっていない高尾は、不安を感じながらも会うことを期待してしまっているのだった。
そして、次の日。約束通りに高尾と緑間は、高尾が治療を受けた場所へと向かう。その場所に行くということは、吸血鬼の領土に入るということだ。ある意味、この確かめに行くというのは命がけだ。
見つかってしまえば、戦闘が始まる。しかし、運が良かったのか吸血鬼族の誰一人も見つからず、その場所に到着したのだ。高尾は、ここだ、というばかりにその場に降りる。緑間は辺りを見回す。