第3章 血祭りの真似事
今吉の言葉で、解散となってしまった。黛と黒子は大人しく自分達の部屋に戻って行った。
その頃、吸血鬼と戦っていた狐族は退散しては、会議室に集まっていたのだ。黄瀬は、先程の戦闘をどこか納得していなかった様子だった。
だが、あそこに残っていても必ず殺されていた。だから、素直に退くしかなかった。氷室は、その様子を黙って見守っていた。
その時、会議室の扉がガチャ!と勢いよく開いた。
「何々?収穫なしなの~?」
どこか意地悪そうな言い方で、高めの声が会議室中に響いた。その声に反応した黄瀬は、その人物に思わず睨み付けてしまった。
だが、その人物の言った通りに、黄瀬は吸血鬼を1人を殺したが、証拠がなかった。だから、ある意味収穫なし…ということになってしまう。
「…なんスか、華菜(かな)っち。戦闘に出てないんスから、文句言わないでほしいっスね。」
「あら?アタシ、他の場所で戦闘を行なっていたわよ?鳳凰族の領域に入って…良い収穫になったわ。なんなら、見るかしら?首、持って来たわよ?」
「…いいっスよ、別に…。」
セミロングの灰色が特徴である、この女性は…染崎 華菜(そめざき かな)。かなりの実力者である。黄瀬は、華菜に負けた気分で、どこか落ち込んでしまった。
今まで話を聞いていた氷室が不思議そうな表情をしては、ちょっと待って…と華菜に問い掛けてしまった。
「鳳凰族と戦闘していい…とは聞いてないが…。」
「アタシが、勝手に行ってきただけよ。」
華菜の一言に、どこか困り果てた表情をしてしまった氷室。
「俺は、止めたんだけど…華菜ネェが聞かなくて。」
「何よ、華鶴(かず)だって、来たじゃない。」
「華菜ネェに何かあったんじゃ、遅いからな。」
華菜の後ろから現れた、華菜の双子の弟でセミロングの灰色が特徴の染崎 華鶴(そめざき かず)。