第10章 仲良くお仕事に行きましょう
櫻井視点
バスルームの中で バタン!っと扉が閉まる音が聞こえた。
(みんな部屋に帰ったんだね…)
部屋の方からはもう音は聞こえない。
(もう なんか 面倒だな)
鏡に映る自分の姿をみて、大きく息を吐き肩を落とす。
目を閉じ 少し足を開いて心でつぶやく
≪やって≫
{かしこまりました}
耳元で聞こえる人ならざる声と体を包む感覚。
その感触が無くなって目を開けると、アイドル櫻井翔が立っている。
「おし 上等」
姿を確認してからバスルームから出る。
部屋を出たら、花のいい香りを感じる
(え?なんで!)
その香りの起点に智くんの背中がある。
「智くんどうしたの?」
智くんの側に走り寄る。
O「は!」
驚いた顔で俺を見る智くん。
(驚くのはコッチだよ!!)
「どうしたの?」
なにか用事だったらいけないからキチンと声をかける。
智くんが口をパクパクさせて俺を見つめる。
「慌てなくてもいいよ?」
取り合えず椅子に座らせる。
(素直に座ってくれるけど…)
O「ずぅんがぁったらしいネジを作ってもらえって…」
しどろもどろの智くん。
「松潤が新しいネジ?を作ってほしいって言ったの?」
聞き取れた言葉を復唱する。
O「うん『仕事までに…速攻でね』って言われた…」
智くんが困った顔して体を降らす。
(意味がわからない
新しいネジ?ってなに?
ネガの間違いか?
でも 俺のカメラはデジタルだからネガは無いし…
ライブに必要なのか?それはそうと 智くん経由ってのも 腑(ふ)に落ちない
とりあえず潤に聞くか…)
携帯を開く。
携帯に未読のメッセージがある。
未読を開くと『捕まえててください』とだけ書いてある。
(捕まえる…智くんを?
さすがに智くんだって逃げやしないよ…
…
まぁ 前科…あるし…)
「智くんは部屋に用事ある?」
穏やかに聞く。
O「ううん ない」
首を振る智くん。
「じゃ 先に二人で行こうか?」
智くんの肩に手を置く。
O「…先に?」
小さく口を開く智くん。
「そう!行こう」
智くんを立たせて手を引く。
(ネジの事は潤が来てからにしよう)