第3章 ずっと、君のそばに。
まさか口移しされるとは思ってなかった。
わずかな時間だったけど、
翔さんの唇が触れた自分の唇が
熱くなったのを感じる。
翔さんも自分のしたことに
今さら気づいたのか
真っ赤になってる。
(どうやら無意識のうちに
やっていたようだ)
「じゃ、ゆっくり寝てて。」
そう言って出て行こうとする
翔さんの手を、
自分でも驚くくらい強い力で
握りしめていた。
「行か…ないで。」
掠れた、消え入りそうな声で、
そう言ってる俺がいた。
もう止められない。
理性の飛んでいった自分は
自分自身でも制御が効かない。
翔さんは目を丸くしてこっちを見てる。
…ま、小さい頃から20何年一緒にいて、
こんな積極的な俺はいなかったと思うし。
「ね?翔さん…。」
ほんとは“翔さん”って呼び方
好きじゃない。
なんか、すごいよそよそしい。
小さい頃は“翔”“カズ”って
お互いに呼び捨てでさ。
友達とか、兄弟とかと何人かで
何にも考えずに遊んでた小さい頃。
中学校、高校と大きくなるにつれて
だんだん他人行儀になってきて。
翔さんが大学に行ってた
4年間は、全く関わりもなかった。