第3章 ずっと、君のそばに。
翔さんを追いかけて
なんとか頑張って2年後に
同じ大学に入ったけど。
キャンパスの中で
翔さんに会うことはなかった。
友達づてに
翔さんの入った会社も聞いて、
同じところに面接受けて。
受かった時は、本当に嬉しかった。
しかも翔さんと同じ経理部になって、
夢みたいだと思ってた。
入って数日の昼休み。
社食で翔さんと会って。
「カ…、二宮?」
“カズ”って言いかけたけど…、
翔さんは何を思ったのか、
“二宮”って言いかえた。
翔さんが高校に入った頃、
「この年になって
“カズ”ってのもね…。」
って言われて“二宮”って
呼ばれるようになって。
本当はまた“カズ”って
呼んでくれるんじゃないかって
期待してたけど。
あっさりと破られて。
そしたらこっちも
“翔”って呼びづらくて、
“翔さん”になって。
もうかれこれ入って10年たったから
入社したてのころみたいな
よそよそしさはなくなったけど、
“二宮”が“ニノ”になっただけで、
それ以上の進展は、なかった。
翔さん。
俺、翔さんのこと
小さい頃から、ずっと好きでした。
その言葉が、喉まで出掛かってるのに、
なけなしの、ほんのわずかの理性が
言わせてくれない。