第3章 暴投
あいにく保健室の先生は職員会議でいなかった。
倉持先輩は「たいしたことねーし、戻るぞ」と言って歩きだした。私はその腕をつかんだ。
「だめですよ!ちゃんと手当しないと…!」
「大げさなんだよお前ら(笑)」
「…じゃあ見せてください!」
「いや、大丈夫だって言ってんだろ」
そう言う倉持先輩の左手を強引につかむと手袋をはずした。
「腫れてるじゃないですか…!」
「…」
倉持先輩は困った顔で頭をかいた。
たぶん私に心配させたくなかったんだろう。
私は保健室の手洗い場まで倉持先輩の腕をひいて
左手を洗い流した。
タオルで優しく水を拭き取ると救急箱から湿布を取り出し
腫れている部分に張り、とれにくいように包帯をまいた。
「すみません、私のせいで…。」
「お前のせーじゃねーよ。」
倉持先輩の左手を両手で優しく握るようにしながら謝ると
右手で倉持先輩は私の頭をぽんぽんとなでた。
「そ、そろそろ戻るか!!」
「は、はいっ」
私は急な出来事に驚いてきっと顔が真っ赤になったんだろう。私のその顔をみて先輩も赤くなっていた。