第5章 個人ランク戦
こんなに迅さんの事を嬉しそうに呼ぶのは駿くんしかいない
迅さんがA級になったと聞いて嬉しそうにランク戦に誘いながら、踊りながら迅さんの周りをまわっている…犬だ
「これは一体…」
「緑川は迅さんの熱烈なファンなんだよ。ネイバーに食われそうな所を助けられてボーダー入った位だしな…って、琥珀も同じような話だよな」
「一緒にしないでください!私はC級の時に風間さんに助けられて、尚且つB級に上がったらすぐに風間隊に来いって勧誘までしてくれたんです!それに私の能力を最大限に生かすまで言われちゃって…それにそれに!B級に上がったら本当にすぐ風間隊に入れてくれたんです!!もう私――」
「あーもうわかった!何度目だよその話…」
「まだまだありますよ!風間さんに言われた事は全部メモしてありますから!」
私の風間さんノートと書かれたメモ帳を見せると、米屋先輩は無言でそれを仕舞わせてきた。納得いかない
「ま、こんな感じで迅バカと風間バカがいるんだよ、ウチには」
米屋先輩が笑いながら言うと遊真は納得し、駿くんが修に嫉妬した理由も理解したようだ
すると駿くんが修の前に立ち、敬語で謝った
修は理由が分からないらしく戸惑う
「先輩を皆の前でボコボコにしちゃいました」
「まぁランク戦だし…」
「違うんです、三雲先輩に恥かかそうと思って…わざとギャラリー集めたんス。すみませんでした」
「まぁ…それはそれでよかったよ」
何故か嬉しそうに言う修に、駿くんは不思議そうに頭を上げた
私も理由が分からず、ついどうして?などと聞いてしまった
「実力以上の評判が立ってたから……実際風間先輩とは、24敗1分けだったからな!!」
大声で言えば、尾ひれがついていた事をギャラリーも理解したようだった
修はそれが嫌だったらしい…なんとも素直な子だ
遊真も駿くんに見せしめにした事を謝り、駿くんが次にやり返すと約束する…いいライバルだと迅さんも嬉しそうだ
しばらく駿くんと迅さんの茶番を見てると、迅さんはそろそろ行くか。と言いつつ修と遊真、そして何故か陽太郎を連れて行ってしまった
「すまん陽介先輩、また今度」
そういっていなくなった遊真達を見送ると、米屋先輩はくるっと私の方を向いてきた
「琥珀、個人戦やるぞ!」