第3章 冬休み
しばらくすると、死にそうな修と余裕の顔の京介が出てきた
すかさず栞先輩が水を渡すと、修は干からびた体を潤す勢いで飲む
「琥珀、お前はやらないのか?」
「いやぁ皆頑張ってるし、迅さんが帰ったら一勝負お願いしようと思ってたところだよ」
「そうか、修。俺これからバイトあるから琥珀に見てもらえ」
「ねぇ京介、あんた私の話聞いてなかったの?」
修がオロオロしている間に、京介はさっさと仕度を済ませて「じゃ、後頼んだ」なんて言って出て行ってしまった
「「・・・・・」」
訓練室前に沈黙がはしる
「あ、あの琥珀先輩…ご指導、お願いしてもいいですか?」
「私、どちらかというと感覚派だから苦手だけど…修の頼みなら仕方ない!先輩に任せて!!」
申し訳なさそうにぺこぺこしながら頼んでくる修に、私は断る術を失ったのだった
訓練室へ入り、修と向き合う
「修はレイガストか、珍しいね」
「は、はい」
「レイガストは重みがある分、トリオン体じゃなくてもトレーニングしやすいんだよ。ほら、同じ重さのおもり持って走ったりできるでしょ?意外に努力のし甲斐がある武器だよ」
「そうなんですね、琥珀先輩の得意武器ってなんなんですか?」
「そうだねー…そのうち見ることになるかもしれないけど、風間隊は全員がスコーピオン使いのアタッカーなの。だから私もスコーピオンを使ってるんだけど、一番得意なのはシューターだよ」
「シューター…」
「そう、嵐山さんとか充とかみたいに銃を使うガンナーとはまた違うの。こんな感じでね」
シューター用のトリガーを起動し、トリオンを手に込める
通称ナタデココとも言われるこの物体を見せると修は驚いたように見つめる
「この間宇佐美先輩に習いました。弾速や威力などを調節できるのが特徴なんですよね?」
「お、呑み込みが早いんだね。そう、これはガンナーと違って一つ一つに自分の命令が下せるの。これは場面に合わせて使い分けるセンスが必要…って言われてるよ」
ゆっくりと胞子のように舞うアステロイドを修は真剣に眺める
彼は私のような感覚派ではなく、確実に作戦を練る頭脳派だろう
「…さて、私の説明はここまで。アタッカー同士で10本勝負しようか」