第3章 君が笑えるように
『松本っ!出張変わってくれる?』
「はぁ!?」
同僚からそんな電話をされてから
約6時間。
俺は2年ぶりに東京に来ていた。
今日から東京に出張のはずだった同僚。
もう結婚していて、奥さんのお腹には
双子の赤ちゃんが。
「予定日はあと10日くらい先だから」と
この出張には行くはずだったけど。
『なんか知らないけどもう生まれそうで
今ももう病院にいるんだけどさ。
どーしても立ち会いたいから
悪いんだけど東京行ってくれない?』
同僚であることの前に
気心の知れた高校のころからの友達だし
アイツにはちょっとした貸しもあるし
そういうことならしょうがないしと
「わかった、行く。」
新幹線に飛び乗ってやってきた、って訳だ。
サンキュ、斗真。
変わってくれてよかった。
仕事の方は日帰りで
終わるようなのだったから
明日の朝、帰りの新幹線まで
時間はたっぷりある。
(仕事だけど)
なかなか来れなかった東京に
来れたからにはやることはひとつ。
「雅紀、今もあの家住んでんのかな…。」