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Bitter Sweet【気象系BL小説】

第6章 A×S【愛くるしい】


櫻井side



雅紀の涙を見た時、

俺、なにやってんだろ…。

って。


大切にしてあげたいのに、
大切にできなかったのは、
俺の方だ。

悪いのは、雅紀なんかじゃないよ。


言葉が足りてない、
俺が悪い。


「ごめん、だから、泣かないでよ…。
雅紀が泣くと、こっちまで辛くなる…」

「ごめっ、いま、今すぐ、
止めるからっ…」


鼻をぐすぐす鳴らして、
目を真っ赤にさせて。

俺は雅紀の涙で濡れた手を
今はただ、優しく握ることしかできなくて。


ごめんな、って心の中で
何度も何度も呟いていた。


雅紀がこんなにボロボロになるまで、
俺は見て見ぬふりしてた。

…本当に、最低なヤツだ。


「翔、ちゃんっ…」

「ん?」

「ごめ、手っ…濡れて、んのにっ…」

「ふふ、いーの。
…雅紀がこんなになるまで
伝えられなかった俺が悪いから…」


俺より背が高いくせに、
脆くて、華奢で。


どんなに愛していても、
俺は言葉がいつも足りないから、
雅紀に満足に伝えられてなかったんだ。

思うだけじゃ、ダメだって。

今更、そんなの遅いかもしれない。

だけど、今できることを、
今のうちにやっちゃわないと、
取り返しのつかないことになるから。


「ね、雅紀。
あんまり目擦ると腫れるよ?
もー、泣き止むの。」

「んっ、ごめっ…」

「ふふ、謝らないでって。
雅紀はなーんにも悪くないんだから。」


子供をあやす親って、
こんな気持ちなんだろうか。

俺には到底理解ができない。
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