第6章 A×S【愛くるしい】
翔ちゃんの気持ちなんて、
とっくにわかってる。
…だから、
心なんかないフリしないでよ。
毎朝、こんな夢で目覚める。
───翔ちゃんと、キスしてる夢。
でも翔ちゃんは、
「好き」とか「愛してる」とか
なんにも言ってくれない。
なのに…俺の心は、翔ちゃんに
「好き」とか「愛してる」とか…
そんな感情でいっぱいで。
夢の中の俺は、
現実と同じようで、
嫌がる翔ちゃんを無視して、
翔ちゃんの全てを奪うんだ。
目覚めの悪い夢だと思ってるよ。
…だけど、
夢の中でも翔ちゃんと一緒だと思うと、
ひねくれた俺は嬉しくなってしまう。
時々…翔ちゃんが俺の方をちらっと見る。
俺は翔ちゃんばっか見てるから、
自然と視線が重なることが嬉しくて
翔ちゃんに向かって微笑みかけるけど…
舞い上がってるのは、
どうも俺だけみたいで
翔ちゃんは何事も無かったように
すぐに視線を逸らしてしまうんだ。
いつだってそうだ…。
一瞬見せた隙を奪おうとしたって
わけのわからない理屈を並べられる。
…俺は納得出来ないんだけど……。