第7章 S×N【Melt.】
泣き止んだあと、
この距離感に
今更ながら気付いて。
和也から離れて、
目を合わせられないでいる。
そんな俺を見兼ねてか
和也が近寄ってきて。
「…帰ろ。」
ってちょっと甘えた声を
出した。
そんなのにも
いちいちきゅんっときてて
「ん」とだけ言う。
…結局、
和也を俺の家に連れ込んだのだが。
することがなにもなく、
ふたりでただソファーに腰掛けるだけ。
たまに触れる指先に、
ふたりしてびくっとして。
それが面白くて、
俺はわざとぶつけてやったりした。
そしたら直に和也が、
「もうっ」
って困ったように
恥ずかしそうに。
その瞬間、
俺は和也を引き寄せて、
胸の中へ収めた。
そうしたら、
何も言わずにただ、
大人しくなっていた。
…あぁ、なんだ。
抱き締めるだなんて、
簡単なことじゃないか。